画像: 最新アルバム『20』は「大きな意味を持つ作品」家入レオ

叫びって、秘めていてもにじみ出てくる。
だから、あえてそれをぶつけなくてもいいかなって思う。

 家入レオの音楽はあらゆる人の心を揺さぶる。センセーショナルなデビュー以来数々の楽曲を発表してきたが、昨年放送されたドラマ『Nのために』の主題歌になった壮大なバラード『Silly』は多くの人の心をわしづかみにした。25日、サードアルバム『20(トゥエンティ)』をリリースする。20歳になったばかりの彼女にインタビューした。

 力強いまなざしは家入レオの魅力だ。眼下に渋谷が広がる所属レコード会社の大きな窓辺に立ち、カメラをグイッと見つめる。シャッター音が響くなか、「今年の目標は笑顔なんですよ(笑)」と笑う。ソフトな視線だが、瞳の奥には力が宿っている。

 まだ高校生だった2012年、ロックテイストのシングル『サブリナ』でデビューした。その年の日本レコード大賞では『Shine』で最優秀新人賞を受賞。その後も、アルバム、シングルと着実にリリースを重ねるとともに、全国ツアーも経験。彼女の存在感は加速度的に増大した。特に昨年は大きく飛躍した年になった。ドラマ『Nのために』(TBS系)に書き下ろした曲『Silly』がさまざまなチャートを駆け上がり、より幅広い層へと家入レオの名前と音楽、その歌声が響きわたった。

「たくさんの人に聞いていただけてうれしかったです。『Silly』は自分にとっても新しい経験をさせてくれた曲でした。ドラマ主題歌のお話をいただいてから原作を読ませていただき、それから楽曲を引き出すという作業。そうやって楽曲をつくるのは初めての経験でした。それと、楽曲に取り組むなかで、生きていたら分からなくなることもあるってことが分かったというか、いくら突き詰めても努力して進んでも見えなくなってしまうこともあるんだって気付かせてもらったのも大きかったです。私自身が物事の白黒をはっきりつけたいっていうのもあって、あいまいさに注目するとか、それについて歌詞を書くということをほとんどしてこなかったんです。そのあいまいさを学べた。この楽曲で白黒つけられないグレーゾーンを学ぶことができました」

 彼女の楽曲を聴いてきた人ならば、『Silly』が彼女にとって新境地であったことは明白だ。喜怒哀楽がはっきりしていて、ティーンエイジャーならではの衝動的な要素を感じる歌詞世界といった、彼女らしい領域から一歩踏み出した曲。アーティスト・家入レオを成長させた。

 自身でもその変化を感じながら制作されたのが、25日リリースのニューアルバム『20』だ。先日、それに先行してシングル『miss you』がリリースされた。

「『Silly』以降、愛のあり方だったりとか、大切な人たちについて考えることが多くなってきました。それまでは楽しい日々を一緒に過ごせる人たちが大切な人たちなんだろうって思ってたんですけど、悲しいこととか理不尽なことを一緒に乗り越えていける人たちこそが真の大切な人たちなんじゃないかなって。大切な人たちを想うなかで、すれ違うことすらも実は大切なんだって思って書いたのが、この曲なんです。考えてみると『Silly』はもちろんですけど、その前にリリースした『純情』があってこそ、書けた曲なんだろうなって。『純情』は、自分の核となる部分を持ちながらもその他のところは周りの環境や自分の成長に合わせて変わっていく、変わらないものを持ちながら変わっていくことの勇気を歌っていて、頑張れば頑張る分だけ進めるっていうのを信じてる10代を象徴するような曲で、20歳になる前の決意表明みたいなものを自分なりに綴っています。『Silly』では、すごく愚かだからこそ生きられるとか愛しさを感じられること、切なさ、甘美な響きもしますけど、格子の向こうの希望と夢というか……そういうことを認めることができた。それで、この『miss you』なので」

 大切な人への想いを綴るラブソングだ。その人を思うからこそ、すれ違う。こう表現すると悲しそうな曲にも思えるが、その先に続く何か、想うことがどんなに素敵なことなのか。彼女が巡らせていた考えがそのままメッセージとなって伝わってくる。

「日々、自分の感じたことをそのまま歌にしていくというのが私の臨み方なんですが、毎回ストンと歌詞にできるわけではないですし……。言葉って、100%の気持ちを表現できる道具なんだけど、その言葉に出会うための旅の時間ってすごく苦しいんですよ。でも、それを挑戦だって思うかっていうとそれはないかな」
 作品を生み出すために何度も何度も旅をする。お気に入りの万年筆で書いて書き直して、推敲して、またやり直して。試行錯誤しながら100%の気持ちの表現を目指す。

「…チャレンジだったところを挙げるとするなら、表現方法かな」と、本人は言う。

「なぜかっていうと、私は今まで感情勝負でやってきたと思うんですよ、歌唱にしても、ライブにしても。喜怒哀楽が表に出やすいっていうのもあるし(笑)、あいまいが好きじゃないっていうのもあるし、自分のなかから生まれてくるインスピレーションをすごく大切にしてきたんです。でもこの曲って、ある意味、無感情が表に出てないんですよ。“笑ってもない 泣いてもない 静かに 僕を見つめる君が 悲しくて”っていう歌詞があるんですけど、笑ってもないし、悲しくもないし、怒ってもないし、うれしがってもないっていう無の表情をどう表現したらいいんだろうかって悩んだんです。具体的にどうしたっていうのはなくて、ただただ集中して臨んだんですけど、結果的には新しい表現方法が自分の中で生まれたんじゃないかなって感じています」

撮影・蔦野裕

『miss you』は、、アルバム『20』の一番最初にも収録されている。この曲で始まるアルバムでは、20歳になったばかりの彼女が「変わらないものを持ちながら、変わっていく」姿を聞ける。まっすぐな部分、とがった部分、そして柔らかさ。さまざまなテイストを持ちながらも、家入レオという1本の芯によって貫かれた楽曲で構成され、圧倒されたり、刺激されたり、優しい気持ちにさせられたり。濃密な作品だ。「『miss you』で家入レオの扉を開いていただけて、その先にある他の扉も開いてみようかな、進んでみようかなって1ミリでも思ってくれる人は引き込める作品になっている自信はあるんです」と、本人。


「20代、これから10年間を充実したものにしていきたいと思ってるんですけど、だからといって頑張って新しいものに触れるというわけではなくて、自分の芯は貫きたい。時代に左右されたくないし、自分らしさは持っていたい。だから、このアルバムは、自分にとって大きな意味を持つ作品になると思います。アルバムの内容も、柔らかい部分を見せるとかいうのではなくて、切なさだとか、ファーストアルバムのころから持っているものも残しつつ……ちょっとずつ変化してるのが分かっていただけると思っています」

 この作品を携えて、20代の1年目をしっかりと土を踏みしめるように歩いていく。まもなく4度目となる全国ツアーも始まる。その規模も回数を重ねるほどに拡大している。

「私は13歳の時に尾崎豊さんの音楽に救われました。おこがましいと思うんですけど、そのバトンを自分も渡していきたいって思うんです。そのためにも、何回もダメだなって言われながらも信じている音楽を創り歌っていきたい。以前はそれを体とか行動で表現しなくちゃっていう焦りがありましたけど、今はそれもスイッチのオンオフができるようになった感じがあるんです。叫びはちゃんと自分のなかに秘めていればにじみ出てくるもの、あえてそれをぶつけなくてもいいかなって思えるようになってきたので。だから今は、自分の信じた道を行くこと、それをやっていこうって思っています。いろんなことがあると思いますけど、自分で解決できないことって自分の目の前で起きそうにない、そう信じて生きているので」

 そういってインタビューを締めくくった家入の眼差しは強く、しなやかだった。20代に足を踏み入れた彼女が、これからどんな作品を紡ぎ出して行くのか。期待せずにはいられない。 (本紙・酒井紫野)

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