画像: http://www.tokyoheadline.com/vol639/culture.16803.php

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 現代人が抱える心の病気に迫る短編集。男を見る目がなく、いつもDV男にばかり引っかかってしまう女が子どもを守るためにボクシングジムに通い、肉体的だけではなく精神的にも変わっていく「ヒット・アンド・アウェイ」。これまで、殴られていたのを自分のせいだと感じ、息を殺して暴力が収まるのを待っていた彼女が最後にとった行動とは。また「冷蔵庫を抱きしめて」は、結婚して幸せの絶頂にいる女性が主人公。しかし結婚前、磁石のように相性がぴったりだと思っていた夫とは食の好みがまったく違っていた。それをきっかけに治ったはずの摂食障害が再びぶり返してしまう。

 そして、自分と似た男が、自分が本来いない場所で目撃される「アナザーフェイス」。いわゆるドッペルゲンガーと言われる現象に似ているが、実はそれは彼が作り出した幻想で…。思わず背筋が寒くなるようなオチもお見事。一転、「顔も見たくないのに」は、お調子者の元カレに振り回される女性が登場。イケメンだけど浮気性、何にも考えていなくてちょっとバカ。そんな男と別れたはいいが、なんと彼がテレビの人気者に! 見たくもないのに、画面にポスターになって彼女の目の前に不意に現れる。元カレのキャラクターが憎めず、ちょっと笑ってしまう話だ。そのほか、「マスク」「カメレオンの地色」「それは言わない約束でしょう」「エンドロールは最後まで」の全8編を収録。DV、摂食障害、対人恐怖症、ゴミ屋敷などなど、出てくる人物や置かれている環境は深刻だ。

 しかし読んでいて重くならず、その心の闇から解放してくれるような読後感がある。心の弱さを認めて、前に進もうとする彼らの姿にエールを送りたくなる作品。

【定価】本体1600円(税別)【発行】新潮社

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