画像: アイドルになりたかった。ただそれだけだったのに。

 こんなに女性アイドルグループがいる時代は珍しい。モーニング娘。辺りから大人数の女性アイドルグループが増えてきたが、なんといっても、会いに行けるアイドルとしてAKB48がデビューしたのが現在のアイドル戦国時代を作っているような気がする。なぜなら、テレビの向こうにいるアイドルは、会えないからこそアイドル。普通の女の子が簡単になれないから、あこがれの存在だったのだ。

 高校生ぐらいの若い登場人物の描写には定評がある朝井リョウの現代のアイドルを主役にした『武道館』。今のアイドルに課せられた、恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業…など題材に、ただ歌って踊るのが大好きだった女の子が、悩み傷つき、何が一番大切なのかを考え、成長していく様子を描く。

 いつかは武道館ライブを目標に活動しているアイドルグループ「NEXT YOU」。そのセンターの杏佳がグループを卒業するとメンバーに打ち明けた。寝耳に水のメンバー真由、碧、波奈、るりか、そして愛子。言葉にならない子、泣きじゃくる子、引き止める子がいる中、その様子を撮影しているカメラのように、レンズを通し冷静に見ている子がいる。この様子ですら、撮影され何かの特典映像かファンサイトのネットへあげられ、商売に使われるのだ。ただアイドルになりたかった。それだけだったのに、人気が出て目標の武道館が近づくにつれ、自分が望むものが分からなくなってくる。アイドル側からアイドルを見つめた意欲作。

『武道館』著者:朝井リョウ

【定価】本体1300円(税別)【発行】文藝春秋

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