画像: http://www.tokyoheadline.com/vol645/interview.17389.php 撮影・神谷渚

http://www.tokyoheadline.com/vol645/interview.17389.php 撮影・神谷渚

 スガは日本を代表する若手フリージャズピアニスト。その演奏スタイルは「即興」を主とし、さまざまなアーティストとの即興対決の迫力は他の追随を許さない。そんなスガが演劇作品の音楽を担当するという。まずはその経緯から。

「僕のマネジャーがKAATのプロデューサーの方とたまたま面識があったらしいんです。白井さんももともと僕の演奏を聴いてくださっていたようで、そんなことから“やってほしい” “やりましょう”ということになりました。ちょうど、曲をしっかり曲として提示できる場が欲しい、ライブだけじゃないこともやってみたい、と思っていた時期だったので、そういうことができそうだなって思ったんです」

 決まった曲と即興、割合的にはどちらが多い?

「どうでしょう…時間的には即興のほうが長いかもしれません」

 そうじゃないとスガダイローに依頼する意味がない。

「そうですよね。多分…ちゃんとしたことをやるのは不得意なので(笑)」

 即興部分は稽古を見て、イメージして曲を作っておくという感じ?

「稽古にも何回かは参加するので、即興といってもやることはある程度は決まっちゃうんだろうな、とは思っています」

 初日が開けて、やっていくなかで客がノってきたら稽古場とは違う感じになることも?

「それが可能なのかどうかというのは、今の段階ではちょっと分からないので、様子をうかがいながらやっていこうと思うんです。多分、日によってあまりムラがあるのはまずいんじゃないかとも思うので」

 即興って、そもそもそういう要素は含んでいるからいいのでは?

「いいんですかね? 演劇を見に来る人の感覚がよく分からないので、そこはなんとも…ですよね」
 あとは演出家の判断で。

「あんまり調子に乗りすぎるとすごい失敗をする可能性も非常に高くなってきますから(笑)」

 ふだん即興でやるときは失敗することはない?

「いや、ありますよ。これ大丈夫なのかな!?みたいなことは。でもそういうところを楽しめるお客さんばかりだからあまり気にしてはいないんです」

 問題は演劇のお客さん。

「2回見て、“全然違うじゃないか!”みたいなクレームが来る可能性は高いですよね(笑)」

 違うからこそ面白い。

「そうなんですけどね。それが通用する場所かどうかは、まだ分からないので(笑)」

 ちなみに曲作りに入る前に『ペール・ギュント』は読んだ?

「読みました。すげー頑張って(笑)。詩の部分は結構つらいところはあるかなって思いました(笑)。詩の場合、訳している人のことをどれだけ信用できるのかっていうところもあるじゃないですか。“これ、本当に面白いのか?”みたいな。自分にその面白さが伝わっているのか分からないんですよ。だから結構厳しかったんですけど、とりあえず話だけは追ってみようと思って最後まで読みました。言い回しなんかはよく分からなかった」

 読みながら、こういう音楽かな?とイメージしながら?

「作っておいたんですが、結局は半分くらいはボツになりました。白井さんのイメージとはちょっと違っていたみたいです。ペール・ギュントって僕の中では結構はちゃめちゃなギャグ的要素もあるな、と思っていたんだけど、そこはあまり出さないようにするってことらしいです。シリアスで不条理感を前面に押し出すということだったので、明るいふざけた曲は全部ボツになりました」

 見る側からすると、俳優が演じてるときでも邪魔になるくらいがっつり弾くようなことがあっても楽しい。

「やはり…、そうですか(笑)」

 チラシで「スガダイロー」の文字を見て足を運んだ人は大概それを期待するのでは?

「やはり(笑)。昨日、館長さんにも言われたんです。“もっと滅茶苦茶に弾いたほうがいいよ”って(笑)」
 ライブでやるような“対決”が劇場でもできれば…。

「俳優さんは決まったことをやらないといけない部分が多いので、そう考えると不利じゃないですか。向こうも変えられるのであれば、その面白さは出てくると思うんですが、音楽がどうなっていようが、その台詞は言わないといけないだろうし。イーブンな戦いではないですよね」

 ソロの他にスガダイロートリオや中村達也とのデュオなどさまざまな形態で演奏する。そういう人の集まりはどういうきっかけで実現?

「酔っ払った勢いかな。一時期はそれに凝っていた時がありました。ひたすら酔っ払ってコマを進めるという(笑)。トリオに関しては僕がちゃんと選んだんですが、それ以外に関しては周りの人に“やったら面白いんじゃない”とか言われてやってみるという感じ。やらされているんですよ(笑)」

 やっていくなかで楽しくなってくる?

「そういう誘いはほとんど受けるようにしているんです。あまり考えないようにしています。やってみないと分からないので、取りあえず全部やってみる。やってみてから考える。ダメだったらやめればいい(笑)」

 公演は10日間ある。

「同じことをそんなに長い期間やったことないから、途中で飽きちゃわないようにしないといけない(笑)」

 俳優の演技も日々変化していくので、そのあたりの心配はないかもしれない。

「そういう刺激はすごくあると思います」

 今回の公演は「ジャニーズとフリージャズの邂逅」という見どころもある。

「女性アイドルとフリージャズっていう組み合わせは結構あるんですが、男性アイドルとフリージャズという組み合わせはなかなかない。滅多にできるものじゃないので、そこもすごく楽しみです。ジャニーズのファンの人がフリージャズを聴いてどういう反応をするのかといったことも見てみたい」

 演奏はオーケストラピットではなく舞台上でする。

「演劇的な動きも要求されることになると思います。弾いていないときにグダグダしていてはダメなんですよね。それに1カ所だけ演技しなければいけないところがあって、それはやばいです。ピアノを弾くのをやめて立ち去らないといけないんですけど、それができるかどうか(笑)。あと、いま一応、役作りのためにヒゲを伸ばしているんです。どんな役でもいいように髪も伸ばしています(笑)。別に何にも言われてないんですけど(笑)、どういうふうにも対応できるように」

 プロの俳優さんみたい。

「あとは歩き方、去り方。脚本に“いつの間にか戻る”って書いてあるんですけど、どうしたらいいんですかね(笑)。そこが一番の肝ですね。メンバーにもヒゲは剃るな、髪も切らないでくれって言ってある。野戦病院の医者みたいな格好でピアノを演奏する、みたいなイメージを勝手に持っているんです(笑)。そういうことを考えているのが、実はちょっと楽しい。でも全然要求されなかったら、それはそれでちょっと悲しいですよね(笑)」

 果たしてどんな舞台になるのか? 久々に予測不能の作品だ。

 ところでスガのツイッターなどを眺めていると、マイブーム的なものが周期的に現れる。最近では蕎麦にはまっているようなのだが…。

「蕎麦はもうすっかり飽きちゃったんです。ホント食べたくないくらい(笑)。毎日食べてたんですが、つらすぎて、今は毎日は食べてません」

 昔はお城に凝っていた時期も…。

「城は…城も飽きました」

 何かに没頭する癖があるようだ。

「没頭するんですが、いきなり飽きるんです。その終わりがいつになるかは全然分からないんですが、“飽きたな”と思ったら突然やめちゃう。カレーライスは100日続いたんですが、これはまだ続けられましたね。でも“このままだと一生食べ続けることになるな。これはやめないといけない”と思ってやめました(笑)。カレーはどの店に行っても違うんですが、蕎麦はある程度食べるとどこも一緒なんです。そば粉と水だけですから(笑)」

 一般人にはなかなか…。

「いや、蕎麦は毎日食べてたら誰でも分かるようになります。だって同じ味しかしませんから(笑)。だんだん、どこの蕎麦屋の系統だな、とか分かってきますから。あと、蕎麦は高くて、結構金がかかるんですよ(笑)」

 あとは模型も。

「模型も今は全然。飽きました」

 坂本龍馬はアルバムのジャケにもしたくらい。

「龍馬も…飽きましたね。『龍馬伝』のころはありとあらゆる龍馬グッズを買い集めてました。龍馬の革靴とか茶碗とか。龍馬のちゃんぽんというものがあったんですが、長崎のちゃんぽんって大正時代くらいからなんで、どう考えても偽物なんですよ。でも買っちゃいましたね(笑)。龍馬は生き方が好きなんですよ。あと映画の『マッドマックス』が3年前くらいから自分の中でブームになっていたんですが、今は飽きちゃってる(笑)」

 公開を前に?

「本当は去年公開だったんですよ。それに合わせて体調を整えて、革ジャンとか買って真っ黒にして結構なり切っていたんだけど、公開が延びちゃって飽きちゃった。今はもう見なくてもいいかなって(笑)」

 では最近は?

「最近は靴かな。月に一足くらいのペースで買っちゃってて、すげえたまっちゃってるんですよ。もう全然履く暇がない(笑)。いま履いている靴は去年買ったんですけど、日本ではあまりないんです。でもすごく歩きにくい(笑)。演奏するときも弾きにくい(笑)」

 生き方も即興的だ。

「だいたい考えない。考え出すと時間の無駄なんで。ぱっと決まったことが一番正解に近い。全然話聞いてない場合もある(笑)。いいよ、って言って(笑)」

「俺は体ひとつで行って弾きゃいいんだろう」みたいな?

「そうですね。いろいろ勝手に話が進んでいて、全然覚えていない時もある(笑)。マネジャーに“言いました!”とか言われるんです(笑)」

 基本的には「なんとかなる」精神。

「そうですね。僕は結構そういう状態が安心できる。例えば飛行機なんかも直接空港に行って乗りたいタイプ。予約するのが嫌なんです。新幹線も予約したことない。その時間に行かないとダメというのがつらい。1週間前に取っちゃうと1週間ずっとつらくてしようがない。あと、指定席も。そこに座らないといけないと決まっているのが嫌」

 遠くに行くときにずっと立ちっぱなしになるんじゃないかという不安は?

「ありますけど、それよりは、行って自由に座れた時の“ああ座れた〜”という満足感のほうが大事。それによっぽどのとき以外はだいたい座れるんですよ、自由席って」

【日時】7月11日(土)〜20日(月)【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール(元町・中華街)【料金】全席指定 S席9500円、A席7000円、B席4500円【問い合わせ】チケットかながわ(TEL:0570-015-415[HP]http://www.kaat.jp/)【作】ヘンリック・イプセン【構成・演出】白井晃【翻訳・上演台本】谷賢一【音楽・演奏】スガダイロー【振付】小野寺修二【出演】内博貴、藤井美菜、加藤和樹、前田美波里 他 【チケット】http://l-tike.com/d1/AA02G03F1.do?DBNID=3&ALCD=1&PGCD=250609

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