画像: 笑って泣けるお笑い青春小説『上方スピリッツ』著者:奈須崇

 著者の奈須崇は、吉本総合芸術学院(NSC)の出身で、同作が小説家デビューとなる。書籍の帯には同期のブラックマヨネーズ・小杉のコメントが掲載。その辺を踏まえて読むと、そのリアリティーに納得しつつ、このエピソードは実話なのか?と、お笑い芸人界の裏をのぞいた気になってしまう。

 ストーリーは、お笑いコンビ「上方スピリッツ」のラジオを偶然聞き、自殺まで考えた引きこもりからハガキ職人を経て、あこがれの上方スピリッツの構成作家として仕事をするようになった阿部の目線で進行していく。上方スピリッツの主戦場は日の出劇場という地下で日の当たらない劇場。売れていない芸人が、いつか売れっ子になることを夢見て、ライブやイベントを行う場所だ。しかし、その劇場の閉鎖が決まってしまう。そのことを阿部は、東京で漫才コンテスト“漫才コロシアム”に出演する2人には内緒にしていた。賞には及ばず失意のうちに大阪に戻って来た2人は自信をなくし、さらに劇場閉鎖という事実にショックを受ける。阿部はなんとかもう一度やる気を出して漫才コロシアムにリベンジしてほしく、さらには劇場の閉鎖を阻止したく奇策を立てるが、事態はことごとく予期せぬ方向へ向かい…。阿倍のお笑いを愛する気持ちと上方スピリッツの苦悩、そして劇場に関わるすべての人の人生に、読みながら心震える瞬間が何度も訪れる。

 しかし、そこをじめっとしたままにせずに、笑いに変えるワザはさすが吉本興業出身だ。いじめられっ子が主人公なので、お笑い好きはもちろん、悩みがある人も救われる痛快青春小説だ。

【定価】本体1600円(税別)【発行】キノブックス

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