今年、創業150周年目を迎えた世界No.1の総合食品・飲料メーカーであるネスレ。本社はスイスにあり、『Good Food, Good Life』をスローガンとし、私たち消費者に高品質で安全かつ健康的な食品を届けている。今回、私が着目したいポイントはネスレのヒット商品である「キットカット(Kit Kat)」の裏側に込められたネスレ日本の想い。私自身、幼少期から食べ続けており、日本人のみなさんにも親しみの深い商品だ。キットカットには全世界共通で「Have a break, have a Kit Kat.」をスローガンとしている。このフレーズはCMでもお馴染みで聞き覚えのある方は多いことだろう。しかし、筆者自身、「どういう意味?」と疑問が生じた。今回はこのフレーズから生まれたキットカットの過去と現在、そして未来を探って考察していく。

“Have a break, have a Kit Kat.”に込めた願いと日本国内での困惑

 このフレーズには実はイギリス人のユーモアが込められている。キットカットを"パキッ"と折る意味でのブレイクと、コーヒーブレイクでもあるようにちょっとひと休みする意味でのブレイクを掛け合わせている。要するに「一息ついて、キットカットを食べよう!」というニュアンスだ。海外ではコーヒーブレイクの時間が主流とされているが、日本国内では文化の違いもあることから後者の意味でのブレイクは存在しない。2001年当時、チョコレート菓子の知名度ではぶっちぎり1位ポッキー、2位キットカットという縮図であった。ネスレ日本はこの縮図を覆すべく、キットカットのフレーズの中にある”日本ならではの真の意味でのブレイク”を模索した。

画像: キットカットのスローガン

キットカットのスローガン

日本人が好きな・嫌いなブレイク(休憩)とは?

 ネスレ日本は消費者からキットカットの真の意味でのブレイクを模索するため、とある調査を行なった。すると日本人が好きなブレイクは温泉でくつろいだり、横になって寝たりするときであり、一方で嫌いなブレイクは授業や仕事合間の休憩時間という意見が挙がった。これには私も同感だ。私自身、大学2年生のときにオックスフォード大学に留学していた。その際、授業の合間にコーヒーブレイクという名の休憩時間があった。例えば授業が2コマ連続で続く際、日本ではそれぞれの休み時間でトイレ休憩がメインの10分ほどのブレイクであるが、イギリスにおける休憩はガッツリ。「次の授業のことは一度忘れて、先生と生徒が共になってティーやコーヒーをお菓子と一緒に食べながら雑談して休憩しましょう」という意味合いがある。日本のブレイクは精神的に休まらない…。これは海外と日本での"ブレイク"の捉え方や文化の乖離が原因だろう。同時にネスレ日本は日本人の理想のブレイクはこういった問題を解決する「ストレスからの解放」であると見出す。

受験応援キャンペーンが産んだ「きっと、勝っとぉ」戦法からの快進撃

 当時、キットカットにおける最大の顧客ターゲットは中高生であったという。そこに理想とするブレイクである「ストレスからの解放」を架け合わせた結果、中高生が抱える受験の不安を吹き飛ばすある語呂が浮かぶ。正直誰でも気づくであろう語呂、「きっと、勝っとぉ=キットカット」。この戦略、正直単純すぎてダサくも思える。しかし、今や多くのメーカーが真似るように使っている。受験シーズンには明治の人気商品である「カール」が「うカール(受かる)」であったり、ロッテのTOPPOが「TOPPA(突破)」になったり…。

画像: 様々なメーカーが販売する受験応援のお菓子

様々なメーカーが販売する受験応援のお菓子

 キットカットの受験応援キャンペーンの始まりは、2つのホテルとのコラボから生まれたようだ。地方の受験生が都内などの入試をする際、遠征をしなければならない。中にははじめての都会でそれだけでパニックになる子もいるだろう。そこでネスレ日本は様々な苦難を乗り越えながら都内の2つのホテルとコラボした。内容としては宿泊した受験生にホテルマンからキットカットと応援メッセージをプレゼントするものだ。私も高校受験の時期、塾講師から応援メッセージ付きのキットカットを頂いた。「全力尽くしてガンバッテ!」のひとことだったが、それだけで気持ちが軽くなり、先生からの愛も伝わった。普段は単なるお菓子でしかないものがアイデア次第でかけがえのない一生物のプレゼントになることもある。そんなキットカットの魅力に私は惹かれた。元々は2つのホテルとのコラボから生まれた受験応援キャンペーンは受験生や保護者の間で話題になり、後々の「きっとサクラサクよ!トレイン」や「キットカットメール」を生み出す。

画像: きっとサクラサクトレイン(JR山手線、中央線、京浜東北線など)

きっとサクラサクトレイン(JR山手線、中央線、京浜東北線など)

画像: 郵便局とコラボした実際に手紙を送ることのできるキットカット

郵便局とコラボした実際に手紙を送ることのできるキットカット

手頃な価格でプレミア感を味わえるキットカットショコラトリー

 近年、多くの百貨店や商業施設で見かけるようになったキットカットショコラトリー。実はこのカタチはネスレ日本が社内で開催する年に1度の「イノベーションアワード」から産まれた。通常のビジネスコンテストとは異なり、その先の「実行した上での成果」が求められるタイプの画期的な仕組みだ。さて、キットカットショコラトリーでは実は「ル・パティシエ・タカギ」のオーナーシェフである高木康政氏が全面監修している。そもそもキットカットはコンビニやスーパーで安価で購入できるものだ。そこにプレミア感を持たせるのは至難の業である。池袋店がオープンする日、私も大行列に我先にと行列に並んだ。実際に行ってみると外国人の方も多く、キットカットは世界中から愛され、期待されている商品であることを感じた。YouTubeで話題になっている動画にこのようなものがある。

画像: World's First KIT KAT STORE in Tokyo 世界初キットカット専門店 池袋 www.youtube.com

World's First KIT KAT STORE in Tokyo 世界初キットカット専門店 池袋

www.youtube.com


 近年こそアベノミクスの影響もあってか、食に対するプレミア志向は亢進しているように見えるが、もともと安価なもので攻めていたものが突然プレミア価格になるのはリスクが伴う。しかし、1度利用してみれば分かることではあるが、この店舗はあまりに高級過ぎず程よいプレミア感と上品なチョコレート菓子を提供している。この店舗の誕生は従来までの考え方の転換というべきか、デザイナーの佐藤可士和さんが提唱するクリエイティブシンキングの論理から生まれたアイデアなのか。有名なパティスリーがつくるチョコレートとは異なり、受け取る側にも気持ちの面での”手軽さ”がある。私はお世話になる先輩や仕事関係で初めてお会いする方に、挨拶の意を込めてしばしば利用させて頂いている。
 直近では高級ハンバーガーや高級パンケーキ、高級ポップコーンと時代のトレンドに乗ってはいるが残念ながら翌年には大半が消えている。私を含めて世の中の大半はミーハー志向であるのも原因の1つとして考えられる。フードアナリストの資格を持ち、デートプランナーをはじめとするとしての飲食関連での仕事も学業との傍らでしている私が感じることは、老舗は別とした際、リノベーションとイノベーションを日々し続けることこそが飲食店舗が生き残る唯一の道だと捉える。プラスα、近年ではinstagramをはじめとするSNSが身近なものになっている背景もあり、「思わず写真を撮り、友人に共有したくなる1枚を撮れる店であるか?」もヒットする上で重要な要素となる。当店舗の顧客ターゲットの対象は存じてないが、おそらく情報感度の高い若い女性客がメインターゲットであろう。黄金比のような配色から成る斬新かつプレミアな世界観をもつデザインとアイデアは現段階では新たなブランドの1つとして定着しつつあるが、話題にさせる仕掛けの面では改善すべき余地も隠されている。その意味でも新規事業であるキットカットショコラトリーも更なる進化を日々生み出さねば残念ながら衰退するのではないか。

画像: キットカットショコラトリー

キットカットショコラトリー

キットカット戦略すべてに共通する「キットカット×〇〇」の構図

 ここまで考察して分かったことは、日本ネスレは他のなにかとコラボすることで成長を遂げているように感じる。コラボというより、マッシュアップであろうか。キットカットという1つの曲を他のなにか別の曲調のものと掛け合わせて新しいメロディーを奏でる。この絶妙なハーモニーを生み出す環境が社員に根付いているのではないかと感じた。また、最近では『ネスレシアター』という新たな取り組みも始動している。

 これからのキットカットの未来は私には分からないが、世界中の人々が一同に集まる東京五輪は大きなビジネスチャンスであり、キットカットを通して日本人と世界の人々を繋ぐチャンスがあると考える。つまり2018年からの2年間では「和風のフレーバーや食べ方」どうこうより、既存のキットカットを利用した日本と世界の人を繋ぐ一種のキャンペーンがより重要になってくると考える。一例にキットカット1つを手にもってわらしべ長者をして世界と日本を繋ぐキャンペーンもありだろう。これらを専用のプラットフォームに写真や動画投稿なりをして競い合うコンテストも面白いかもしれない。「A Kitkat from World to JAPAN」のような感じで。もちろん、単純に私の願望が東京五輪開催の年にはシャイな日本人が世界の人々と笑顔でハイタッチする光景を見たいがための1つの提案でもある。いずれにしても次の4年間キーワードは製品であることはもちろんのことであるがキットカットを通して人と人とを繋ぐ仕組み創りこそが次のチャンスであると私は考察する。

”アイデア次第では製品を通して人と人とを繋ぐことができる”

ネスレは常に時代の先を行き、人の心に刺さる素敵な仕掛けをする。たいていの面白く斬新なイノベーションの事例はネスレから産まれる。ネスレといったら「ネスカフェ!」が思い浮かぶがあえて今回はキットカットだけに注目した。

 終わりに筆者はキットカットの未来と2020年の東京五輪が開催される年に何が起こるのかについて深く関心を抱き、ネスレ日本の方々に直接伺ってみたいと強く想った。よって、私は実行したいと思う。

参考文献

「ネスレの稼ぐ仕組み」高岡浩三 2015

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