創業70周年目を迎えた株式会社コーセー。国内大手の1つで歴史ある化粧品会社だ。先日のフィギュアスケートのグランプリファイナルでは看板スポンサーであったことからも多くのCMを見た方も多いだろう。以前、社長である小林氏に化粧品業界の変遷とKOSEの未来について伺ったが、今回は業界初のヒット化粧品の開発を複数手掛けた取締役である荒金久美氏に「ヒット化粧品開発秘話に学ぶイノベーションを生み出すリーダーシップ」について伺った。荒金氏はヒット化粧品であるモイスチュアリポソームや商品化後たった1年間で100万本突破したモイスチュアスキンリペアの開発のキーパーソンであり、2005年には日経ウーマン「Woman of the year」の8位に輝いた経歴もある業界きっての敏腕の開発者だ。

ヒット化粧品開発物語

筆者:1992年に発売された業界初のリポソーム剤型美容液「モイスチュアリポソーム」の商品化の開発物語をお聞かせください。

荒金氏:当時、製薬業界でドラッグデリバリー機能を持つ剤型として注目されていたリポソームを化粧品に応用できないかと思ったのが商品化に繋がったきっかけです。私はリポソームに関する研究を1985年に開始したのですが、リポソーム化粧品の効果・安全性・安定性を証明するためには多くの課題や本社からも「そもそもリポソームって何?、やって意味があるのか?」と言われたことも多々ありました。研究成果を厚生労働省に申請し、許可を獲得、そして化粧品の国際学会で「リポソームの長期安定性の確保と肌効果」を発表した後に、開発・販売に至りました。そして、販売開始後にヒットの兆しが出てくると周りの対応も一変していきました。特に業界として初めてやることには大きな不安要素があるために抵抗が待ち受けていました。初の試みの際には会社の方向性や方針も確固とされたものでもありません。また、いかにしてそうした反発をどのようにしてねじ伏せて前に進めていくかが重要でした。反発がある分、それだけ常識を超えた魅力ある商品が生まれる可能性も高いのです。そして、商品開発において重要なこととして初の試みだろうができない理由を並べないこと、会社としての方針が決まっていなくても自身で創り出すことはマインドとして重要なことであることを学びました。そしてリーダーとして任せた相手(メンバー)がやることには組織全体に価値があると認めていることをメンバーに周知させることも重要であることも当商品の開発を通して学びました。

画像: 株式会社コーセー 取締役 荒金久美氏

株式会社コーセー 取締役 荒金久美氏

画像1: ヒット化粧品開発物語

筆者:続いて2004年に発売された業界初の水分保持能改善美容液である「モイスチュアスキンリペア」の商品化の開発物語をお聞かせください。

荒金氏:化粧品は薬事法でルールが決められており、「改善・治す」という言葉の表記は許されていませんでした。一方でこれまで我々が消費者に提供してきた”保湿”はあくまでこちらから与えるものであり、その人本来が持つ保湿能力を改善するようなものでもありませんでした。本来の消費者の潜在的ニーズは「改善・治す」にあるのではないか?と考え、シーズとなりうる成分探しに奔走しました。すると、とある日の新聞にある酒造会社が発見したライスパワーエキスに関する記事を読みました。当商品でも用いられているライスパワーエキスは肌のセラミド産生を促し、水分保持能を改善することで皮膚のバリア能を高めるために、新規医薬部外品の有効成分として承認された「創りだす保湿」を体現化するものです。このライスパワーエキスを求めて新聞を読んだ数日後にその酒造会社の元を訪れ、交渉の末にタッグを組んでの商品開発に発展しました。一種のオープンイノベーションでもある事例です。顧客の利益を研究テーマの主コンセプトにすることで潜在的ニーズを満たす商品は生まれてくるのです。弊社にはオープンイノベーションにより生まれた化粧品は他にも多くあります。

画像2: ヒット化粧品開発物語

イノベーションを生み出すリーダーシップとは?

筆者:上記、2つの商品の開発を荒金様は手掛けた訳ですが、ヒット商品を開発するために必要なもの、イノベーションを生み出すためのリーダーシップとはなんでしょうか?

荒金氏:特に弊社の場合は性別・年齢・役職などに関係なく消費者・ターゲット目線で欲しい商品・あったらいいなと思う商品を真剣かつ真摯に考えようとする姿勢があります。特にこれは研究開発の人間にとても重要なマインドです。顧客の潜在的ニーズは何か?を追求した上でアイデアを行動に移して具現化することが大切になります。私の場合は研究所時代に名刺の数が3500枚あったことに象徴されるように、人と人との縁から知識と知恵は多く生まれた経緯があります。この人と人との相互作用が顧客の期待を超える価値の提供に繋がったと思います。商品開発で重要である「いかにして筋の良いシーズを見つけ出すか?」、これを見定める眼は人との繋がり、交流の中から養われることもあるでしょう。そして、いくら客観的なデータを積み重ねても何がヒットするかは分からないところもあるので、常に主観を磨くことが重要であるとも思います。そして革新を起こすリーダーには到達点に辿りつくためのステップを見出し、その過程でチームをリードしていく姿勢や個人の発想や革新を組織の決断になるようにドライブしていく推進力が求められます。論理的思考ももちろん大切ですが最終的に重要なのは強い信念と思いの共有だと思います。

画像: 2020年に向けたアクション宣言

2020年に向けたアクション宣言

あとがき

ヒット商品の誕生には運や社会情勢の影響ももちろんある。しかし、大半は開発者の顧客の潜在的ニーズを満たすための努力によるものだと当取材を通して改めて私は感じた。「初の試み」には期待も高い一方でそれ以上の大きな不安やリスク、反発がある。いかにして負の要素を正に変えるかが開発者には問われる。イノベーションを生み出すマインド・スキルには人によって様々なものがあるだろう。しかし、共通する軸は変わらないはずだ。そして、荒金氏に他の化粧品のコラボ事例を聞いたところ、なんとあの「ジルスチュアート」もその一例だという。米国出身のファッションデザイナーである彼女はアパレルの領域で事業を展開していたが、自身の掲げる世界観を化粧品を通して社会に提供したい想いがあり、KOSEに開発・販売の依頼を自ら試みたそうだ。彼女のように世界には多くのビジョンや夢を持つイノベーターは存在する。その想いを受け止め、社会に訴求していくだけのブランド、情熱がある世界のKOSEだからこそ、今後も革新的な化粧品を世の中に提供し、消費者の笑顔を生み出し続けていくだろう。

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