映画大国インドから超エネルギッシュなスポ根映画がやってきた。『ダンガル きっと強くなる』がそれだ。ダンガルとはヒンズー語でレスリングを指す。インドはオリンピック・レスリングが盛んなお国柄で、現在は賞金総額300万ドル(約3億4500万円)!という破格のファイトマネーが保障されたレスリングのプロリーグも開催されている。

 レスリング愛が異常に強い父マハヴィル・シンが2人の娘ギタとバビータにレスリングを熱血指導し、自分が果たせなかったオリンピック出場の夢を娘たちに託す。

 練習や試合のリアリティ度はやたら高い。本物のレスラーが動いているかのようだ。撮影前、出演者たちは8カ月に渡ってレスリング特訓を受けたというエピソードを聞いて思わず納得してしまった。

 個人的には、砂を敷きつめた屋外の試合場でギタが地元の男子レスラーを破る場面が新鮮だった。インドならではの草レスリングを垣間見ることができたからだ。

 いや、この映画は私のようなレスリング好きでなくても十分楽しめる。2時間20分という長編ながら、親子ならではの愛憎劇を繰り返しながら進むストーリー展開は息をのむ。ことごとく作戦が合わないコーチとの対立は、昨今の時事問題とも重なり合う。

 その一方で、まだ歴史の浅い女子レスリングという競技を扱うことで、「女性が格闘技をやるなんてもってのほか」という考えがいまだはびこるインドに根付いた女性蔑視の問題を鮮やかに浮かび上がらせている。そもそもギタは実在するインドのレスラーで、この国に女子レスリングを普及させた功労者だ。吉田沙保里や伊調馨と闘った経験を持つ。

 過去に『フォックスキャッチャー』などレスリングを題材にした映画は何本かあったが、日本で大ヒットすることはなかった。すでにダンガルは中国では『君の名は』の倍以上の興行収益をあげているという。レスリング映画の常識を覆す傑作だ。(スポーツライター・布施鋼治)

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