画像: 【インタビュー】山田孝之×荒川良々 映画『ハード・コア』愛すべきアウトローの生きざまにあこがれた!

【インタビュー】山田孝之×荒川良々 映画『ハード・コア』愛すべきアウトローの生きざまにあこがれた!

原作は10数年来の愛読書!
あまりにも純粋で信念を曲げて生きることができず、そのせいで仕事や居場所も無くしてきた男・権藤右近。怪しい活動家に雇われ、精神薄弱気味の牛山とともに山奥で埋蔵金探しをしていたが、ある日、古びたロボットを発見。なぜか自分たちに寄り添うそのロボットにロボオと名づけ埋蔵金探しを手伝わせてみると、ロボオは現代科学の粋を凌駕する高性能ロボットと判明。退屈な日々に嫌気がさしていた右近の弟・左近も巻き込み、人生を逆転させる計画を立てるが...。
右近を演じる山田孝之と、牛山を演じる荒川良々は2人とも原作を「10数年来の愛読書だった」と語る。
荒川良々(以下:荒川)「僕は当初から好きな作品だったんですが、山下監督が10年ほど前にドラマの『週刊真木よう子』で、いましろさん原作の回を撮っていたときに、初めてお会いしたんですけど、そのときに山下監督や大根(仁)さん、赤堀(雅秋)さんたちと『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』の話になったんですよね。それが今回ついに映画をやることになって。原作が好きなので少し怖い気持ちもあったんですけどね。現場に入ったら山下監督をはじめスタッフの皆さんが、ちゃんと面白いものを作ろう、いい画を撮ろうとしているのがすごく伝わってきたので、完成が楽しみでした」
山田孝之(以下:山田)「確かに、静止画として描かれている原作の独特な空気感を、人間が映像でやるとなると良くも悪くもリアリティーが出るので、僕もそこの不安はありましたけど、そこはもう山下監督に身をゆだねる気持ちで(笑)。でも実は撮影中、僕はずっともやもやしながらやっていた。何が正解なんだろう、これでいいんだろうかと、ずっと思いながらやっていたんです。多分、この右近という男を演じていたせいもあるんですけどね。役を演じていると、やはりその人物の精神状態に少なからず引っ張られていくところがあるので。でも撮影が終わったら役者にできることは何も無いので、あとは編集作業などで、より右近らしく『ハード・コア』らしく仕上げてもらうしかないと思って完成を待ちました。ちゃんと映画として『ハード・コア』になったんじゃないかなと思います」
右近と牛山が2人とも、自分の思いを上手に伝えられるタイプではないことも、難しい芝居となったのでは。
山田「牛山は、感情は出せるんだけど言語として表せないんですよね(笑)」
荒川「代わりに右近が全部1人で喋っていましたもんね(笑)」
山田「牛山が何か言いたいときは右近が“こういうことか”と代弁しないといけないんです。そのことに、原作を読んでいたときも台本を読んだときも、それで話が成立していたから気づいていなかったんです。漫画だと心の声が、この辺に書かれるじゃないですか(笑)。でも映像でやろうとすると、セリフで語らなきゃいけない部分がどうしても出てくる。それが、こんなにしんどいものなのかと思いました」
荒川「2人分のセリフを言っているわけですもんね(笑)」
山田「ロボオなんて表情も動かないですし。右近と牛山、ロボオの3人のシーンでは“今、俺1人で芝居しているんじゃないか?”と思うこともありました。いや、皆それぞれの芝居をしてはいるんですけど(笑)」
牛山は無口のうえ複雑な意思の疎通に難があり、ロボオに至ってはそもそも人間ですらない。それでも彼らといるとき、右近の孤独や葛藤はわずかに癒されるように見える。
山田「映画の中でも、右近は牛山のことを不憫な奴だ、というようなことを言っているじゃないですか。僕は、右近って牛山のことをそんなふうに見ていたんだ、と少し意外に思ったんです。原作を読んでいたときはそういうふうには感じていなかった。純粋に人として好きで友情のような思いを抱いていて、何とかこいつに女性経験をさせてやりたい、という思いでいるんだと思っていました。でも実は右近は、人として自分のほうがちょっと上に見ているという意識もあったことに今回気づきました。それも人間らしくていいんじゃないかと思います」
荒川「牛山って何にもできないんですよね。何も分かっていなくて人についていくしかない。そこに、ロボオが加わってより所になるというか、自分もあまりしゃべれないけど、そんな自分よりも自己表現ができないロボオがいることで、バランスが少し取れるようになる」
山田「たぶん牛山は右近がいなくても生きていける人なんですよ。逆に右近が、牛山のことを必要だったんでしょうね」
荒川「かもしれないですね」
そんな右近や牛山の運命を大きく変えるのが正体不明の高性能ロボット・ロボオ。
荒川「ロボオに入っているのは、オシリペンペンズのボーカル、石井モタコなんですけど、僕はもともと彼の友人なんです。撮影していた夏は本当に暑くて、たいてい牛山が一番ロボオの近くにいるので、カットがかかると僕がすぐに被り物を外したり、気絶してないか確認したりしていました(笑)。ロボオがモタコで本当に良かったなと思います」
山田「ある意味モタコさんが一番、大変だったんでしょうね。自分でどういう仕草になっているのか中からまったく分からない状態ですし」
怪しい結社を組織する活動家・金城銀次郎を演じるのはドラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』にも登場した首くくり栲象(2018年3月に逝去)。
山田「『カンヌー』でご一緒させていただいたんですけど、劇映画でも栲象さんと一緒にお芝居ができたことは本当に良かったです。素敵な方で、ユーモアがあって、職人気質な人でしたね」
荒川「銀次郎が刀を振るシーンの撮影のとき...」
山田「本番前にずっと素振りの練習をしていましたね」
荒川「そう、それで本番前に疲れちゃったんだよね(笑)」
山田「本番で刀を振る速度が遅くなっちゃって」
荒川「栲象さんも似たような、一生懸命で不器用な人なんだなと思いました」
ちゃんと生きるって何ですか?
社会に迎合できず、怒りや悲しみを抱えながらも最下層で生きる男たちの物語に、山田や荒川が引かれた理由とは。
山田「あこがれ、だと思います。原作の帯でも書かせていただきましたけど内心、こういうふうに生きたいという思いがあるんです。でも現実は社会に適応して生きていかないといけない。僕は20代のころずっと“無人島でナイフを持って生活できたらそれがベスト”と言っていたんです。たぶん精神的に行き詰まりを感じていたんでしょう(笑)。人付き合いもお金も無くて、仕事ではなく生きるために必要な分だけ魚を採る、必要なときだけ火を焚く。それがベストな生き方だと思っていた時期があったので、あこがれがあるんです。でも原作の『ハード・コア—』のファンの思いって、そういうことなんじゃないですかね」
山下監督をはじめ山田、荒川たちの、原作への思いや右近たちへのあこがれが、映画オリジナルのエンディングに込められているのかもしれない。
荒川「不器用で、でもかわいげがあって。生きづらさを抱えて、もがきながらも自分らしく生きている姿にあこがれる気持ちはありますよね。でもこういう人たちって女性からするとどうなのかな(笑)」
山田「僕らみたいにあこがれたりはしないかもしれないけど、女性にとってはちょっと母性をくすぐられるところもあるんじゃないかと思っているんですけど(笑)。でも一歩引いて、大らかな気持ちで見守っていただかないと、このダメ男!ってなるかもしれない(笑)」
もし2人の身近に右近や牛山みたいな人物がいたら...?
荒川「子供のころに牛山みたいな人いましたよ。小学校時代、“グラウンドを何周走ったら〇〇に着く”みたいな目標を立てていたんですけど、その子は毎朝、早く目標に達したくて、ずっと走ってるんですよ。一途なところとか、ちょっと牛山に似てるなと。僕は優しく...してませんでしたけど(笑)」
山田「右近が身近にいたら絶対に仲良くはなれないでしょうね」
荒川「僕は右近の気持ちがけっこう分かります。冒頭で、ハロウィーンではしゃいでるグループに右近がキレますけど、僕もハロウィンの日に渋谷で仕事があると早めに帰りますからね。他にも、いろいろ腹立つことって多いじゃないですか」
山田「荒川さん、けっこう腹立ててますよね(笑)」
荒川「そう。目の前で指をさされるとかね。思わず衝動的に、というならいいんですけど、クスクス笑いながら指さしてくるとか(笑)」
山田「僕も明らかに年下な人に“あ、山田だ!”とか言われると、絶対俺のほうが年上だよ!と言いたくなります」
一見、社会からほぼ逸脱しているような右近だが、彼が抱えている願いは、本当は誰もが心の奥底で望んでいることなのかもしれない。
山田「右近と左近が居酒屋で衝突するシーンに凝縮されていますよね。“ちゃんと”生きようとすると生きづらい。現代の社会で生きるなら間違ってると思ったことでも受け入れていかないといけない。だから右近は社会から見るとちゃんと生きることができていない。間違っているのは世の中なのか、彼らなのか」
2人にとって“ちゃんと生きる”とは?
山田「生きていく場所とどんな生き方をしているかによるでしょうね。そこが無人島か、ジャングルの村か。今、僕はこの時代に東京で俳優として生きている。となると、周りに合わせるとか、自己主張しすぎないとかいったことが必須になってくる」
荒川「遅刻をしないことかな。あと怒らないとか、我慢すること(笑)」
山田「すみません、今日少し遅刻しました(笑)。ま、我慢するからこそ得られる喜びや楽しみもありますからね」
今、無人島で生きたいという願望は?
山田「無いです(笑)。今は勝手にいろんな使命感を持って生きているので。そこに喜びや楽しみもあるし、自分1人が楽しい状態にいたところで本当の喜びはないと思っています。今、僕は大変なりに楽しいので、それを少しでも多くの人と共有したい。そのためには、ここでやらないといけないことがありますから」
荒川「ちゃんと生きるって...壮大なテーマになりましたね(笑)」
切なくもおかしい、アウトローたちの人生活劇。予想もつかぬ結末へ疾走する右近たちのドラマを手に汗握りながら見守るうちに、ふと自分の中の“ハード・コア”に気づくかも。
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)

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