画像: いま日本になぜ“子ども食堂”が必要なのか。映画『こどもしょくどう』

いま日本になぜ“子ども食堂”が必要なのか。映画『こどもしょくどう』

現代社会のひずみに苦しむ子どもたちを自然体で体現
食堂を営む両親と妹と健やかな日々を過ごしている小学5年生ユウト。一方、幼なじみのタカシの家は育児放棄気味の母子家庭で、ユウトの両親はタカシを心配してひんぱんに夕食をふるまっていた。あるときから、ユウトとタカシは河原で車中生活をしているミチルとヒカル姉妹の姿を目にするようになる。2人の様子を見かねたユウトは2人を家に招き、いぶかる両親に食事を出してほしいと頼む。数日後、姉妹の父親が2人を置いて姿を消し...。
切実な問題を抱える子供たちを目の当たりにし、それを見過ごし続ける大人たちに歯がゆい思いを抱える少年ユウトを演じた藤本哉汰と、幼い妹ヒカルとともに車中生活をする少女ミチルを演じた鈴木梨央。本作に出演しようと思った理由は? そしてどんな役作りを?
藤本哉汰(以下:藤本)「最初、ユウトは勇気が無くて幼なじみのタカシがいじめられていたりミチルたちの姿を見ても何も行動に移すことができないんですけど、だんだん勇気を出してミチルたちを助けようと行動するようになるところがかっこいいなと思って、自分もそんなふうにユウトと一緒に成長できたらいいなと、この役を演じたいと思いました」
鈴木梨央(以下:鈴木)「私は、もともとこども食堂のことはニュースで見たことがあるくらいで、そんなに知識も無かったので、こども食堂や貧困問題や虐待のこととかについて調べたりして、自分なりにいろいろ考えました。役作りとしては、撮影前に妹役の古川凛ちゃんと過ごす時間を監督に頂いたり、ミチルの気持ちになるために、家に帰ってからもなるべく部屋で1人になってあまり母と過ごさないようにしたりしました。台本を何度も読んでミチルの気持ちをたくさん考えました」
日向寺監督(以下:監督)「僕にとって役者は感情を表現するものなんですが、この2人はセリフやアクションが無くても、表情で感情を豊かに伝えることができる。今回、けっこうセリフは少ない方だと思うんですが、それでも観客にユウトやミチルが今どんな思いでいるのかを、芝居をし過ぎることなく自然体で伝えてくれる。この2人には本当にユウトがいる、ミチルがいるんだと思わせる力があると思います」
とはいえユウトやミチルと同年代の2人とって難しい役だったはず。
藤本「ユウトがミチルたちのお母さんを探して帰りが遅くなって、両親と初めてケンカするシーンがあるんですけど、気持ちを吐き出すお芝居がすごく難しかったです。でもユウトが“お母さんたちは食事をタカシたちに出すだけで、それ以外は何もしてないじゃないか”ということを言っていて、確かにと思って。ユウトの気持ちに納得したら演じることができました。
監督「あのシーンは比較的早い段階で撮らなきゃいけなかったから、よけいに大変だったよね」
藤本「はい(笑)」
鈴木「私はどの場面というより、すべてのシーンで考えさせられたし難しいと思いました。ミチルの“...”という部分でユウトたちに何を伝えたいのかとか、ミチル自身が隠し持っている気持ちを、家や待ち時間のときにずっと考えていました。本当はユウトたちに助けを求めたいんだろうけど、口に出せない気持ちや、最初のほうの拒絶している気持ちを表現するのが難しかったです。たぶんミチルはこういう苦しい状況でもお母さんやお父さんに会いたくて、きっと帰ってきてくれる、と思っていたんだと思います」
ここで描かれていることは、今の日本では誰にでも起こりうる
2人が現実に体験していなくてもユウトやミチルの気持ちは分かると思った、と監督。
監督「もちろん普段、車の中で生活している子に会うことはまず無いでしょう。でも会ったとしたら、と考えた時に、この子たちにとって分からない感情というものは無いだろうと思いました。だから、段取りやリハーサルをせず、最初の瞬間に湧き出た感情をとらえるほうがいいと思ったんです」
これからどうなるのか知る由もない子供たちの切実な思いが、スクリーンからヒリヒリと伝わってくる。2人も自分なりにこども食堂について調べてみたという。
鈴木「この作品をきっかけに、ネットで調べてみたらホームページがあって、実際に活動している人たちのところに、ご飯とか野菜とかを寄付できるということを初めて知りました。この映画を見て、自分にも何かできないかなと思ったときに、こういうことから行動すれば少しは何か変わるかもしれないと思いました」
藤本「僕もニュースなどで存在は知っていたんですけどあまり詳しくは知らなかったので今回、自分なりに少し調べてみて、日本の大きな課題として貧困問題があるということと、そのための助けになるような活動もたくさんあるということを知りました」
鈴木「この映画を通して、苦しんでいる子供がたくさんいるということを多くの人に知ってほしいですし、食事に困っていたり苦しんでいる子にもこういう場所があるんだということを知ってもらえたらいいなと思います。最近、虐待のニュースとかも多いので、自分に何ができるのかとか考えたときに、専用の相談ダイヤルがあることを調べたりしました。何か気づいたら勇気をもって行動したいと思うし、この映画を見てそう思ってくれる人が増えたらうれしいです」
藤本「普段はなかなか気づかないかもしれないけど、同年代の子どもたちの中にもミチルやタカシみたいな子がいるかもしれないって考えてみてほしいです。ユウトはちょっと変わっているのかもしれないけど、周りの人のつらい気持ちに気づくことができる子なのかなと思います。タカシがいじめられていることに気づいていて助けることはできなくても、友達の輪に入れたりしているし、ミチルたちのことも助けようとしたし。ユウトみたいに気づいて行動できればいいですよね」
鈴木「私も学校に行けばみんな普通に生活できている子ばかりだけど、それが当たり前と思うんじゃなくて、そういう生活ができない子もいることを知っておかないといけないと思う」
もし近所にユウトの家の“子ども食堂”があったら...?
藤本「僕だったら、行ってもいいか聞いて、ユウトだったら全然来ていいよって言うと思うし、ユウトの友だちだったら一緒に遊ぼうよって行って、そこにいる子たちとも仲良くなってみたいです」
鈴木「もし自分がミチルのような状況にあったら、温かいご飯を食べられたりみんなと話すことができる場所があれば行きたいと思うはず。食事に困っている子だけじゃなくても、コミュニケーションの場所として温かい場所があるっていいことだなと思います」
社会のひずみに直面する子どもたちを演じ切った2人。
監督「完成した作品を見てどうでした?」
藤本「いい映画だなと思いました。最後、ミチルとヒカルがこの先どうなるんだろうと思って、ちょっと悲しくなったけど。続きはどうなるのか、気になる終わり方でした」
鈴木「確かに私も気になりました」
監督「それはね、この物語が“これでおしまい”となったらダメなんだと思ったんだ。藤本君が言ってくれたように、あの後ミチルとヒカルはどうなるのかなとこの映画を見た人も思ってくれるのが、一番いいことなんじゃないかなと思う」
2人「あー、そういうことかあ」
監督「この映画で描かれていることは、今の日本では誰にでも起こりうること。特別なことではないと思います。現在、子ども食堂の数は全国で3000カ所にものぼっています。もともとは温かい食事を1日1度でも子どもたちにと、この映画のようにして誕生したんですが、今ではもう少し幅を広げ地域の場所、新しい共同体になっているところも多いんです。今子ども食堂がなぜ日本に増えているのか、どのように必要とされているのか、この映画をきっかけに考えてみていただければうれしいです」
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)

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