画像: “日曜午後6時感”を思い出させてくれる ひたすらエモすぎる「ちびまる子ちゃんランド」

“日曜午後6時感”を思い出させてくれる ひたすらエモすぎる「ちびまる子ちゃんランド」

「ちびまる子ちゃん」などで知られる漫画家・さくらももこさんが、昨年8月に53歳で亡くなってから約一年が過ぎた。そんなさくら先生のお膝元、静岡県静岡市清水区には、漫画(アニメ)の世界を閉じ込めたかのような「ちびまる子ちゃんランド」がある。
「え? 清水市じゃないの!?」と違うところに食いついてしまった人のために説明しておくと、2003年4月1日、静岡市との新設合併により、清水市は静岡市の一部となり、その後2005年に政令指定都市に移行する際に清水区として生まれ変わっている。さくら先生が作中で描いた清水市は、名称だけで言えば、今はもう存在していないということになる。
話を戻そう。「ちびまる子ちゃんランド」は、劇中同様、昭和40年代をリアルに再現したセットや、まる子、たまちゃん、友蔵などなど、おなじみのキャラクターがパネルで勢ぞろいするテーマパークだ。1時間ほどで堪能できる程よいサイズ感もちょうど良い。熱心なまる子ファンのみならず、日曜午後6時に「やっぱりちびまる子ちゃんはおもろいわ」などと、母親が作ったカレーなんかを食べながら、何となく見ていた人まで、涙腺を直撃するエモさにあふれている。
というのも、「ちびまる子ちゃんランド」に入るや否や、“日曜午後6時感”がすごいのである。「風呂に入りなさい!」とか、「いつまで寝そべってんの!?」などなど、自分が母親から叱責された日曜午後6時の光景がよみがえってくる。そんなことを思い出しつつ、まる子とまる子の母(すみれ)のパネルを見てしまおうものなら、かつてのだらしなった自分と、それを叱る母を見ているかのようで、いい歳こいたオッサンなのに、気が付くと“エモい”、そしてまた“エモい”とつぶやいている自分に気が付いてしまうのだ。よく分からない若者言葉“エモい”を、年甲斐もなく使ってしまっている自分がキモい――ことは百も承知だが、普段まったく使わないこの謎の言葉でしか伝えられない雰囲気が、「ちびまる子ちゃんランド」には充満している。
“エモい”の正体は、昭和生まれが口にする“昭和っぽい”と同義なのではないかと考えていた。昭和を知らない若い世代は、体感していないわけだから昭和的(なもの)が分からない。逆さに振っても“昭和っぽい”などとは、どうしたって口から出てこない。だけれど、言葉にできないノスタルジーというのは、世代に関係なく「いいなぁ」と思ってしまうもの。我々がそうした感覚を、往々にして“昭和っぽい”と称するように、若い世代は“エモい”という言葉を使うことで、昭和感を伝えていたのではないかと思っていた。「ちびまる子ちゃんランド」に来るまでは。
江戸時代を知らない我々が、EDテーマ「インスピレーション(ジプシー・キング)」が流れる「鬼平犯科帳」の花鳥風月を描いた至極のエンディング映像を見たとき、“江戸っぽい”などと感傷に浸ることは、まずない。 あの映像を見て、もしも言葉を紡ぐなら、どういうわけか“エモい”の方がよっぽどピタッとハマる。
ともすれば、“昭和っぽい”“江戸っぽい”という言葉以上に、“エモい”という言葉には、時代を超越したノスタルジーを形容する全能感があるのではないか。“日曜午後6時感”すら漂わせてしまうのは、そういうことなのではないか。この空間にいればいるほど、「ちびまる子ちゃん」という作品が、ただ単に昭和を描いているだけではないことに気が付かされる。やっぱりさくらももこ先生は、偉大だったんだ。
――エモの正体まで見えてくるような「ちびまる子ちゃんランド」。昭和のノスタルジードンピシャ世代が、「あの頃はよかった。そんな時代もあったね」と中島みゆきチックに悦に入るような郷愁だけには終わらない、圧倒的エモさを放っている。さくら先生没後一年が経ち、多くの家族連れ、カップルが押し寄せる同テーマパークを見ていると、時代、世代を超えて、親しまれていることが、とても伝わってくる。伝統・郷愁に、新しい世代がつぎ足し、味をアップデートしていく。まるで、うなぎ屋の秘伝のタレだ。うなぎ屋の秘伝のタレは、“エモい”んだ。
館内からこだまする、キートン山田の「後半へ、続く」というナレーション。ああ、まだ終わらないで......。出口に近づくと、何か日曜が終わってしまうかのような、やっぱりあの“日曜午後6時感”が押し寄せる。たまたまかもしれない。でも、扉の向こうは現実=月曜日が待っている。出たくないけど、出るしかない。「ちびまる子ちゃん」を見ていた日曜午後6時は、いつもそんな気分だった。ゆめいっぱい、の空間が広がっている。
ちびまる子ちゃんランド
【住所】静岡県静岡市清水区入船町13-15 エスパルスドリームプラザ3F
【営業時間】午前10:00~午後8:00(最終入館午後7:30)
【入場料】大人(中学生以上)600円、小人(3歳以上)400円 ※2歳以下は無料
【URL】http://www.chibimarukochan-land.com/
(写真・文 我妻弘崇)

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