画像: マネの名画になりきって...上野で美術家・森村泰昌のワークショップ開催

マネの名画になりきって...上野で美術家・森村泰昌のワークショップ開催

東京・上野の東京都美術館 講堂ステージにて25日、名画や著名人に扮したセルフポートレイトで知られる美術家の森村泰昌によるワークショップ「モリー=ベルジェールの写真館」が行われた。現在開催中の展覧会「コートールド美術館展 魅惑の印象派」の関連企画として、本展のイメージビジュアルでもある印象派の画家・マネの最晩年の傑作といわれる《フォリー=ベルジェールのバー》のバーメイドに公募で選ばれた一般客が変身。1989年に発表した作品「美術館の娘(劇場A、劇場B)」でバーメイドに扮した森村自身も、鏡に映る男性として撮影に参加する。
「チーム・モリムラ」のメイクアップ担当、スタイリスト、写真家などが当選者をバーメイドに変身させ、当時使用した舞台装置や衣装を用いながら、森村立ち会いのもとで作品を再現するという贅沢なワークショップ。撮影前に約1時間の時間をかけて入念にメイクを施され、衣装を着た女性がステージに登場すると、まずは中心となる正面を向いたバーメイドのポーズを撮影開始。《フォリー=ベルジェールのバー》のプリントと見比べながら、少しずつポーズや表情、衣装などを調整していく。講堂は本展の鑑賞者にも開放され、見学に訪れた人も撮影の様子を固唾を飲んで見守っている。
無事に1カット目が終了すると今度は森村を交え、背後の鏡に映るバーメイドと男性のポーズを撮影する。撮影位置についてみると、作品通りに撮影しようとした場合、驚くほどバーメイドと男性の距離が近くなることが判明。平面の絵画の世界ではカウンター越しであるはずの2人だが、立体的に再現を試みると思わぬ事実が明らかに。こちらも顔や手の位置などを微調整しながら撮影し、OKとなった。その場でそれぞれのカットを確認したが、最終的には2パターンのカットを合成して完成する。
撮影を終えた都内在住の鶴田寛子さんは、友人から教えてもらい今回のワークショップに応募した。この日に向けての準備は「(肌を整えるのに)パックとか、気をつけていました。2日前からニキビができちゃってあんまり意味なかったんですけど(笑)」と笑う。2カット目の2人の距離について「本当にもうすぐキスしそうな、頬がついちゃうかなくらい近かったけど、写真になるとそこまでの距離を感じなかった。そう考えると『この絵はなんなんだろう』とすごく不思議」と首をひねった。
「ここに立って(カメラマンから)指示された時に、うつろだったりムッとしてるような、微笑んでも見える表情というのは、この少女の時代や年齢での不安やいろんな感情があっての表情なのかなと感じた」といい、今回の変身体験を「絵の中の人物になってみると、作品や作者、その時代などに興味や気がつくことが深まる。いまの気持ちとしてはもっとこの時代の絵を見たい、知りたいなと純粋に思っています」とうれしそうに語った。
森村は「美術館の娘(劇場A、劇場B)」制作当時には実現できなかった、背後の鏡に映るカウンターを立体にするなどの構想を、今回の舞台装置にすべて盛り込んだという。
「マネの絵は鏡なのにあたかも現実世界があるかのような、鏡なのか現実なのか分からない工夫が凝らされている」と森村。新しく立体にした舞台装置は、およそ1カ月ほどで一気に制作した。通常は1人ですべての登場人物を演じる森村は「(相手の)存在感というのは今回初めてで、もう体がくっついてたんですよ(笑)。本当はカウンター越しだからおかしいんですけどそうなったし、話をしているから目が合っているはずなのに全然違う方向を向かないとああいう角度にならない」と構図の不思議さに言及。
今回のワークショップでの発見を、森村は「バーメイドが前のめりになっているのが面白いと思って。一歩踏み出すような、世の中のいろんなことに対して引いていないところに、この女性の意志を感じる」と語る。バーメイドをを客席から見て「やる人によっていろいろな人物像になる。少なくともここ(舞台装置)に立ってしまうから、なにか考えなきゃいけないんですよ。僕がやるのと彼女がやるのは違うんだろうな、と思いつつ見てました」と微笑んだ。
さらに、マネの魅力について「この《フォリー=ベルジェールのバー》は鏡というアイテムを使います。鏡は不思議なもので、平面なんだけど奥行きがあって立体的。マネの絵も同じで、平面であることと立体であることが行き交うような感じがあって、これは僕の解釈ですけど虚像が現実の世界で、バーメイドを鏡の世界というふうに捉えることもできる。マネは本来は後ろ向きで見えていない女性を、どんな表情をしているのか、なにを思っているのか表して、虚実逆転させているのかな」と明かした。
マネの《フォリー=ベルジェールのバー》をはじめ、ルノワールやドガ、ゴーガンなど、実業家サミュエル・コートールドが収集したコレクションから印象派・ポスト印象派の作品を紹介する「コートールド美術館展 魅惑の印象派」は、東京・上野の東京都美術館で12月15日まで。
森村泰昌プロフィール
1951年大阪市生まれ、同市在住。京都市立芸術大学大学院専攻科修了。1985年、ゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト写真を制作。以降、美術史上の名画や往年の映画女優、20世紀の偉人などに扮した写真や映像作品を手がけ続けている。1989年、ヴェネツィア・ビエンナーレの企画展に出品するなど国内外で展覧会を開催するほか、2014年には横浜トリエンナーレのアーティスティック・ディレクターも務めた。昨年11月には、大阪に個人美術館「モリムラ@ミュージアム」(https://www.morimura-at-museum.org/)がオープンした。

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