画像: 【徳井健太の菩薩目線】第42回 千鳥のカッコよさは、年配のタクシー運転手にも伝わっていた

【徳井健太の菩薩目線】第42回 千鳥のカッコよさは、年配のタクシー運転手にも伝わっていた

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第42回目は、「BiSHドハマり芸人」収録後のタクシーでの体験について、独自の梵鐘を鳴らす――。
『アメトーーク!』収録後、共演した「BiSHドハマり芸人」の面子と飲みに行った。
ほどよく酔いが回る、それくらいの時間が経ったくらいだろうか、話題は多忙を極めるノブさんに向けられていた。俺たちが想像している10倍くらい、ノブさんのスケジュールはすさまじいものだった。すると、アインシュタインの稲田(直樹)が、こう切り出した。
「ノブさんって、いま、楽しいんですか?」
ノブさんは、「どうやろなぁ......楽しくないかもなぁ」と答えた。稲田は、
「ちょっと待ってくださいよ。僕らが大阪で見ていた千鳥はものすごいカリスマだった。いつ東京に行っても売れると思ったし、幸せになると思っていた。俺は納得ができない。幸せじゃないわけがない。なんで、もっと頼ってくれないんですか?」って。さらに、「 今日の収録で“稲田頼むぞ”と言ってくれたら、もっとボケたし......俺、もっとやれますよ」と続けるんだ。
俺は、こんな菩薩みたいな男が、お笑い界にいることに衝撃を受けた。ご存知の通り、稲田は、ハゲているし、アゴも出ているし、決して顔面偏差値は高くない。そんな男が、少年マンガの主人公みたいなこと言う。「なぜ言えるんだ」って思うと同時に、ストレートに伝えることができる稲田という男の人間の器に感動してしまった。『アメトーーク!』で、「稲ちゃんカッコイイ芸人」が行われたのも大納得だよ。
聞きづらいことを聞くって、ものすごい体力を使うと思うんだ。普通だったら、もっと薄くスライスして、やんわりと聞くみたいなところがあると思う。でも、稲田は思いっきり大上段からズバッと聞くわけ。稲田がルフィで、ノブさんがチョッパーみたいになっているんだよ。ドラム王国編の『うるせェ!!! いこう!!! 』、あの名場面みたいな感じだった。
たしかに外見は大事なのかもしれない。だけど、人間ってそれだけじゃないんだなって。奥深いものなんだよね。輪をかけて、ノブさんが大悟さんのことを褒めていてさ。先日、たまたま大悟さんと飲んだときには、ノブさんのことを「あいつは覇者になる」って賞賛するの。 飲んでいたBiSHドハマり芸人、俺を含めて誰一人、相方の名前なんて一度も出てこなかった。もっとも先輩である千鳥が、そういうことを言い合える関係性であることを目の当たりにして、「千鳥に天下取ってほしい」って心から思ったし、その千鳥に真正面から飛び込める稲田に、「かっこいいな」って、ただただ痺れた。感傷に浸りながら、宴席は解散した。
収録は深夜まで及び、酒は憂いの玉箒。終電はとうに過ぎ、タクシーで帰ることになる。芸人たちとタクシーを捕まえ、ひとりひとりその場を去る。俺が乗った50代と思しき個人タクシーの運転手が、ドアを閉めた直後、ポツリと呟く。
『今、カネオくんの声の人いましたね』
「えっ?」
『あの人、カネオくんの声の人でしょ』
ノブさんは、『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』(NHK)という番組で、カネオくんの声を担当している。そんな角度からノブさんの話題を切り出す人、俺は初めて見た。その瞬間、「この運転手、めちゃくちゃお笑いに詳しいな。狂ってるな」って思った。なぜなら、ノブさんのことをカネオくんって呼ぶ人、そうそういないからね。
「ノブさんのこと好きなんですか?」と聞くと、『好きですね~、でも、大悟さんの方がもっと好きですね』と、松本引越センターみたいなことを言い始めた。ボケているのかなと思ったけど、そういうわけではないらしい。運転手が話を続ける。
『時代に流されないで、自分の好きなことをしている人たちを、私はテレビで見たいんですよね。千鳥ってそうじゃないですか。欽ちゃん、ドリフ、ひょうきん族からダウンタウン......ずっと見てきたけど、そういう馬鹿をやっている人ってカッコよくて、家で馬鹿みたいに笑っていると幸せな気持ちになるんですよ。芸人さんにまでモラルを求められるような時代になって、本当につまんない時代になっちゃったって思いますよ。芸人にモラルなんか求めてね。いろんな人たちがいるのに、全員に紋切り型のモラルを求めるってどうなんでしょうね。お客さんは、どう思ってるんですか?』
いいこと言うな――。俺は単純にそう思った。と、同時に、「俺のことを知っているのかな」とも。もしかしたらスタッフだと思われているかもしれない。乗車してからまだ一言も、ノブコブとは言われていない。俺が答える。
「都会や田舎で考え方が違うように、難しいところがあるなとは思いますよね」
運転手が返す。
『でも、お客さん、北海道だからどっちの気持ちも分かるんじゃないんですか?』
俺の出身地を言い当てる――。この運転手、お笑いバカだ(褒め言葉)。「詳しいんですね」、そう笑いながら話すと、
『もちろんですよ。徳井さんが出ていたピカルもずっと見てましたよ』って。本当に詳しいんだ。聞けば、TVerで地方のバラエティも欠かさず見ているという。今、50代だとしたら、この人は40代のときに『ピカルの定理』を見ていることになる。心の底から嬉しくなっちゃってね。
『製作費の問題もあるんだろうけど、コントが見たいな。文化だと思うんですよ。なくなったら寂しいですよ』
そんな話を帰路の最中、とうとうと続けてくれて。会計を済ませ、後部座席から降りようとしたとき、運転手は俺を見て、言葉を探すように、
『なんか......見たくなるテレビ、作ってくださいね』
と、一言口にしたんだ。俺、泣きそうになった。
欅坂46のドーム公演、BiSHドハマり芸人、そして帰路のタクシー。こんなに幸せな一日ってあるんだね。眠りについて目が覚めたら、また同じ一日が始まってもいいと思えるくらい幸せな一日だった。
※【徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
◆プロフィル......とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。

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