画像: 【徳井健太の菩薩目線】第51回 時代は、天竺鼠を放っておくはてずがない。川原は、“好きなことで、生きていく”の極北にいる

【徳井健太の菩薩目線】第51回 時代は、天竺鼠を放っておくはてずがない。川原は、“好きなことで、生きていく”の極北にいる

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第51回目は、天竺鼠について独自の梵鐘を鳴らす――。
音声コンテンツ『酒と話と徳井と芸人』のゲストとして、天竺鼠と話をする機会があった。彼らとは、2回くらいしか話したことがなかった。独特な雰囲気も相成って、怖いイメージを抱いていた。
この番組は、“腹を割って話そう”というコンセプトが根底にある。とは言っても、なかなか気まずいところもあるから、少しお酒の力を借りて打ち解けていこうよ、という趣旨もある。だけど、開口一番、瀬下が「今日はバイクできたので酒は飲めません」と伝えてきた。怖い、と思った。
「俺、酒を飲んでもそんなに変わらないんですよ。ヤンキーだったからって、酒に酔ってケンカしたこともないですし」と、狂った正論をかましてきたから、俺は「なるほどな」と思うと同時に、やっぱり怖い、と思った。
一筋縄ではいかない。特に、川原とは話を始めてすぐに、「このままお笑いの話をしても面白くはならないな」と感じた。そこで天竺鼠の馴れ初めを含めた、彼らの生い立ちを聞くことにした。もう『お笑いポポロ』のライターだよね。
彼らのお笑い史1ページ目については、『酒と話と徳井と芸人』を聴いてほしい。『週刊少年ジャンプ』の努力・友情・勝利よろしく、面白い・狂っている・熱い......芸人の三拍子が詰まりまくっているから、ここでは書き切れない“濃さ”がある。だから、聴いてほしい。
ヤンキー漫画のような出会い、NSC時代に瀬下が“自分が理解できない川原のネタで教室が大爆笑に包まれた”ことで「俺はネタを作るのをやめよう」と悟った話、まったく客ウケしていない中で笑い飯と千鳥が「baseよしもと」の支配人に、「あいつらは絶対に面白いからレギュラーに上げてくれ」と直談判する話、支配人に噛みつく話......もう、話を聞いていて大河ドラマみたいなダイナミックな面白さがある。その上で、基本、彼らの話に登場する人物が、“川原のネタを理解できる人”と“理解できない人”、この二種類しか出てこない。最高。
ややもすれば、天邪鬼で尖ったイメージが先行する天竺鼠。だけど、ガラッと変わってしまった。彼らの話を聞けば聞くほど、天竺鼠のファンになっていく自分がいたんだ。
「降りてくるまでネタが作れない」という川原の異次元さ
「天竺鼠は東京進出が早かった」。そんなことを思う人も多いかもしれない。ところが、川原は「大阪時代と比べて、収入は何倍にもなっています」と教えてくれる。どういうことか。「自分ができないことはやめた」、そう彼は言うんだ。
「テレビで活躍したいし、テレビで活躍している芸人さんたちを見て単純にスゴいと思っている。でも、いろいろ試してみたけど、どうしてもできなかった。それをやればやるほど、自分が思っている純粋に面白いと思うことができなくなっていった」と。
俺は、川原のネタ作りの姿勢に衝撃を受けた。「降りてくるまで待つ」。単独ライブ3日前まで何も作っていないこともあるらしい。「僕だって作りたいんですよ。でも、降りてこないんですよ」。本当にヤバかったときは、当日にようやく降りてきて、7本のネタをおろしたそうだ――こいつ天才だなって感心した。そんなアプローチ、見たことがない。聞いたことがない。川原が作っているのは、ネタなんだろうかとすら思ったほどだよ。そういう状況だから、特にコントの場合、瀬下の言動が最小限になってしまうらしい。そりゃそうだ、当日に完成するわけだから、こんなに難易度の高いツッコミの立場もない。イカれているぜ、天竺鼠。
川原のTwitterのフォロワー数は、驚異の56万人超えだ。人の魅力は、決してSNSの数字なんかで測れるものではないけど、なぜフォロワー数が多いのか......それは川原が持つ純粋な面白さへの追求心に、魅せられてしまうからだろうな。
当然、彼のファンはさまざまな業界にも多い。自分ができないことしかしない川原の面白さを、異なる分野で活かそうという人たちも数多くいて、デザインや絵を描くことも珍しくないという。それゆえの、年収は上がっている、なんだ。好きなことしかできない。だけど、可能性は広がるということを体現している。YouTuberの「好きなことで、生きていく」、その極北にいる存在が川原という男なのかもしれない。
先輩からも「もっとちゃんとすればお前らは売れる」と言われ続け、ちゃんとすることを放棄した男。「ちゃんと漫才するって何なんですか?」と、心を開いてくれたのか、俺に話してくれる川原の横で、ずっと瀬下は無言を貫いている。その姿も、やっぱり面白いんだよね。
こんな2人を、時代が放っておくわけがない。間違いなく彼らの才能は、爆発する。個人的に、NetflixやAmazonプライム・ビデオなんかで、川原がただただ海外の美術館巡りをするだけの番組とか、観てみたい。
※【徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
◆プロフィル......とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen

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