画像: 【徳井健太の菩薩目線】第64回 リモート収録は、「各番組の意地の見本市」だった

【徳井健太の菩薩目線】第64回 リモート収録は、「各番組の意地の見本市」だった

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第64回目は、リモート収録から見えた各番組のこだわりについて、独自の梵鐘を鳴らす――。
『テレビ千鳥』に出演する機会があった。「渋い」と思ったんだ。
その数日前、『ゴッドタン』の企画「腐りカルタを作ろう」に出演した。腐り芸人と呼ばれる板倉さん(インパルス)、岩井(ハライチ)とともに腐った言葉のカルタを作るという内容だったんだけど、我ながら上手くいかなかった。俺は芸能界をぬるぬると生きている、腐って牙をむく以上に勝手に悟りを開こうとしている。誰かを攻撃することよりも、俺が現世の苦しみから逃れることだけを考えている。板倉さんや岩井のような攻撃性がない。その日は落ち込んだものだよ。
リモート収録の怖さも思い知った。リモート収録は、スタジオ収録と違って、皆が一斉に話し出すような場にはならない。順々に、各人の喋るタイミングが設けられるため大喜利のようなスタイルと相性がいい。ともすれば、板倉さんや岩井のような大喜利力のある人間には及ばないわけで、もっと達観したカルタを放つべきだったとも反省した。いろいろと考えさせられたリモート収録だった。
ほどなくして『テレビ千鳥』の収録を迎える。『テレビ千鳥』の DVD が発売されるとのことで、これまで放送された回を振り返りながら喋るという内容。俺が得意とするところだけど、コロナ禍、どんな収録になるのかそわそわしていた。収録場所は、スタジオではなくテレビ朝日の屋上だった。『テレビ千鳥』ファンであれば、大悟さんがひたすらレモンサワーを作り続けた場所と言えばわかるだろう。「天空>リモート」。渋い。
考えてもみてほしい。今回の趣旨は、『テレビ千鳥』の過去の放送回を見ながら各々が語るだけ――、超リモート向きの企画だ。ところが、天空の下でやってしまう。お笑いの“生”の現場に親しんできた俺たちは、横で誰かが話している内容に耳をそばだて、横やりを入れる。その反復が大きな反響を生み出し、盛り上がりを形成していくところが多分にあるわけだけど、リモートではそれが難しい。
だからこそ、なのかな。 『テレビ千鳥』は、あくまで笑いの現場の質感を優先する選択を取る。リモート全盛のタイミングで、あえて大空の下で、大勢のスタッフとともにただただVTRを見て語る。意地を感じた一日だった。
時代の流れや自然を邪魔しちゃいけない
コロナによるリモート収録の拡大は、各番組の矜持の見本市のようになっていた。『金スマ』は、ボケているのか、意地なのか分からない演出に踏み切る。出演者の後方に、いつも控えているエキストラの赤服女性たち数十人を、わざわざリモートで出演させていた。自分の気がふれているのかと勘違いするほどのとんでもない光景。居なくても成立するはずのエキストラ群を、あえてリモート画面で並べることで番組の独自性を担保する。もう情念だよ。
『ヒルナンデス!』も興味深かった。コロナ以前からゲームコーナーが増えていた同番組は、リモート出演に切り替わるや、ゲームもリモートモードの様相を呈していたんだ。例えば、椅子に座っているとおぼしき4人の出演者が映し出され、「この中で一人だけ空気イスをしている人がいます、誰でしょう?」といったゲームや、クイズに不正解すると自分のリモート画面(ワイプ画面)が縮小するなど、リモートならではのアイデアが散りばめられていた。一人のテレビ番組ファンとして、感心してしまったほどだ。
ひとまず緊急事態宣言は解除された。けど、日本のテレビ番組は、コロナ禍を経て、確実に変身していくんだと予感した。結果的に、テレビにとってはさまざまな実験の場になったわけだからね。
その変化が、どういった変化を連続的に作り出していくのか分からない。「今までのように客前で漫才やコントをすることができるか?」と問われると、返答に困る。実際、コロナ禍以前に企画していたネルソンズとの公演『ネルソンズのフジロックへの道!』も、いつできるのか。であれば。時代の転換期に、俺たちが存在しているのだとしたら、やはり次の時代にアジャストできるようなことを、トライするべきだと思うんだ。VRやアバター、AR......そういった情報技術と重なりながら進歩していくんだろうな。
コロナは、現実や真実、いろいろなものを見せつける。インドでは、ロックダウンによって大気汚染が改善され、何十年ぶりにヒマラヤ山脈が見えたなんて地域もある。人間が一番邪魔をしているのかもしれない。時代の流れや自然に対して、出しゃばってはいけないってことだ。邪魔をしようとすればするほど、目の前の視界は晴れないんだ。
※【徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
◆プロフィル......とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen

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