今年で創設100周年を迎える豊島区西池袋の重要文化財「自由学園明日館(じゆうがくえんみょうにちかん)」で10日、「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」両方の選定を受けている豊島区と協力し、SDGsへの市民の関心を高めることを目的としたイベント「心豊かな暮らしづくりが、ひとをつくり、明日をつくる!」を開催した。これは、豊島区が制定する「豊島区国際アート・カルチャー特命大使/SDGs特命大使」の団体特命大使である同館の自主企画事業。

 最初に開会の挨拶に立ったのは、豊島区観光協会名誉会長で同特命大使代表幹事の齋木勝好氏。「豊島区肝いりの特命大使制度が始まって5年。大使の数は約1500人と大きな集まりとなったが、SDGs未来都市の構築には市民の皆さんの力が必要。官民一体オール豊島で挑戦したい」と抱負を述べた。

 続いて登壇した自由学園の高橋和也学園長は、イベント会場となった「自由学園明日館」の歴史に触れ、「これからもこの由緒ある建物が豊島区民の文化発信に使われると嬉しい」と語った。

 挨拶の最後は高野之夫豊島区長。まずは実際に観客を入れての、いわゆるリアル開催を「久しぶりに皆さんと一堂に会することができた」と喜んだ。そして、今回の会場である重要文化財の「自由学園明日館」は豊島区の誇りとし、同館も企業大使として参加している特命大使の力を借りて「素晴らしい豊島区を作り上げたい」と誓った。

メインイベントとなるのは、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花氏による基調講演である。テーマは「エシカルな暮らし方を新しい幸せのものさしに」。末吉氏は慶應義塾大学総合政策学部卒業後、TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして世界中を旅し、その経験を元に、現在はエシカル消費を普及させるための活動を日本全国で行っている。

 まずは「エシカル」という言葉についての説明があった。直訳すると“倫理的な”という意味だが、エシカル協会では「人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動」と規定。日本に古来伝わる「おたがいさま」「おもいやり」「もったいない」といった言葉や考え方に通じ、「だからこそ日本が率先して世界に発信して行きたい」と力説した。

 次に、同氏がエシカルな考え方に目覚めたきっかけについて語られた。ターニングポイントは、ミステリーハンターとして訪れたアフリカ・タンザニアの氷河。温暖化の影響で溶けかかっている姿を見て、「地球はすべてつながっている。もしかした私達日本人の活動も影響しているのでは」と気づき、その場で環境保全をライフワークにすることを誓ったという。

 その後、世界中の社会問題の最前線を取材して回った末吉氏は、我々が日々消費している食品や衣類、娯楽品の生産課程において、児童労働など深刻な人権侵害が起きていることを知り、これを何とかしたいと考えたことがエシカル活動の原点だという。

 末吉氏によれば、エシカルな活動の中心となるのが「エシカル消費」だ。これは人や社会、地球環境に配慮した商品やサービスを積極的に購入すること。日々の消費行動を変えるだけで社会貢献ができる。例えば、フェアトレード認証マークのついた商品を選んで買うことも有効な手段のひとつだ。また、そうした活動を、自治体をあげて取り組んでいる「フェアトレードタウン」があることを紹介し、「ぜひ豊島区も目指して欲しい」と呼びかけた。

 講演の後半で語られたSDGs先進国スウェーデンのレポートも興味深い。日本に比べ「25年先に行っている」という同国のマルメ市では、バスは全て市民の出した生ゴミを再生したバイオガスを燃料にしている。また、「ナッジ・コミュニケーション」という手法も示唆に富んでいた。ナッジ(nudge)とは「そっと後押しする」という意味の言葉で、上から目線で語るのではなく、例えばスーパーの冷凍食品棚の扉に『孫のために早く扉を締めましょう』というひと言を添えるなど、さりげない方法で意義を伝えるやり方だ。

 他にも興味深いエピソードが次々と語られ、会場を埋めつくした観客は熱心に耳を傾けていた。最後に末吉氏は、自らの信念を次のように述べて講演を締めくくった。

「何もしなければ現状の問題悪化に加担することになる。しかし行動すれば問題解決の端緒となる。何を言うかではなく、何をするかが大事だ」

 こうした話が、豊島区で100年続く重要文化財で語られた事には大きな意味があるだろう。その後行われた高野区長、高橋学園長、そして末吉氏による鼎談でも、エシカルひいてはSDGsの考え方を元にした未来の街づくりへの抱負が語られた。

 中でも印象深かったのが、末吉氏の「SDGsの17の項目には文化がない」という発言に対して、高野区長が「すべて(を実践すると)文化につながる(からあえて項目にない)」と答えたことだ。これまで長くアートや文化による町おこしを実践してきた区長の発言だけに、大いに腑に落ちるものがあった。

 最後に特命大使副代表、渡邊裕之氏の挨拶で幕を下ろした今回のイベント。フランク・ロイド・ライトが手掛けた重要文化財の美しさとともに、エシカル精神が参加者の心に刻まれたことだろう。

(取材・文:いからしひろき)

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